くらしの豊かさをワンランクアップさせる住環境を活かした可変性のあるプランに

くらしの豊かさをワンランクアップさせる住環境を活かした可変性のあるプランに

クリエイターの声

ボンドアーキテクツ

事業提案競技に応募されたきっかけは何でしょうか。

「ニコイチ」という2つの住戸を1つにするという取り組みに面白いなと感じました。団地というと入居率が低いイメージもありましたが、コンペの募集概要や現地を見ると敷地内や周辺地域には緑も豊かで、入居者も900戸のうち8~9割は入居されていると聞いて、住みやすい環境なんだと瞬時に思いました。現地を見てただ単にリノベーションを手がけるだけのプロジェクトではないのだと悟りました。90㎡の住戸というのは広いし、新しい試みができる。バルコニーを介するという独特な計画が設計の介入によって無理なく実現でき、魅力的な住まい方が提案できる物件だと思いました。

名古屋を拠点に活動されていますが、大阪や関西で団地に対する違いはありますか。

今回、ボンドアーキテクツという3人での設計組織でそのうちの一人となる宮本が以前、名古屋のDIY、OKという条件の団地に改装して住んでいました。建築の専門誌を見ていても東京と関西では、関西の方が事例も多くてリノベーションに対する熱量が高いように感じます。業界の中でも早い段階で、古いものをリノベーションする取り組みを行っているので地域柄から来ているような気がします。私たちも、団地のリノベーションはやってみたいと考えていたので携わることができて嬉しく思います。

住まい方のイメージ、設計段階で気をつけたポイントなど、設計のコンセプトを教えてください。

現地を見て敷地内の起伏が最大の特徴だと思いました。平坦な敷地ではなく起伏があることで眺望が良くなますし、隣棟間隔も広いので開放感もあります。高さの変化があることで生活にも変化が生まれるので、住むにはとても環境の良い場所だと感じました。そのロケーションを活かして、南側と北側の窓から見えるグリーンや日当たり、風通し、住む人の動線などの流れを住戸内の間取りに取り込もうと考えました。「ニコイチ」のプランでは、田の字プランとジグザクプランの2プラン、「1住戸リノベーション」ではそのままでも使えるし、ゆくゆく隣の住戸が空いてニコイチにして良いように流動性を持たせたプランにしました。ニコイチでは、東側の住戸を家族がメインでくらすスペースとして、西側の住戸は来客などをもてなすサロンのようなパブリックスペースとして使えるようにしましたが、寝室・子供部屋といった各居室にあえて名前を付けず、「ルーム」・「ガーデン」としたのも住まい手が自分の好みに合わせてお部屋が使えるように、名称や使用用途を決めない・固定しないことを意図しています。ルームとガーデンが横並びなのも住まい手の、コレクションや趣味などのこだわりの持ち物があふれる「ガーデン」とよりプライベートな空間である「ルーム」が隣りあうことで空間と生活にグラデーションが生まれるのではないかと考えています。

ニコイチ「プラン2」間取り
ニコイチ「プラン2」間取り、イメージパース

ニコイチ「プラン2」間取り、イメージパース

ニコイチ「プラン3」間取り
ニコイチ「プラン3」イメージパース

ニコイチ「プラン3」間取り、イメージパース

公社のリノベーションの可能性についてどう思われますか。

少子化などで住宅が余って行く時代なので、こういったリノベーション事業は増えていくと考えています。これから数年のうちには本格化すのではないでしょうか。そんな中この事業をずっと継続することで、数年分の事例がストックされることになるので、関西に留まらず日本全体的に影響を与えるような良い事例になると感じます。とても興味深いプロジェクトです。

設計の狙いなどその他、こだわったことはありますか。

家族構成が変化しても、長く住んでもらえる基盤が作れるように可変性のある間取りにしています。部屋を仕切る障子は取り外しができるので、広く使うこともできますしDIYで自分好みの家具を作って配置することもできます。自分たちの生活を自分たちでクリエイティブしていけるプランになっています。

リノベ45「プラン2」間取り
リノベ45「プラン2」イメージパース

リノベ45「プラン2」間取り、イメージパース

プロフィール

「ボンドアーキテクツ +C ・E・Management」共同企業体
ボンドアーキテクツ

植村康平(うえむら こうへい)
1985年 愛知県豊橋市生まれ
2008年 愛知淑徳大学現代社会学部現代社会学科都市環境デザインコース 卒業
2013年 D.I.G Architects勤務
2015年 植村康平建築設計事務所 設立
2018年 ボンドアーキテクツとして活動

受賞歴
せんだいデザインリーグ2008卒業設計日本一決定戦 特別賞
第5回東海地区卒業設計合同展 dipcolle 金賞
四国化成2016空間デザインコンテスト ゴールド賞


宮本 久美子(みやもと くみこ)
1983年 愛知県名古屋市生まれ
2006年 愛知淑徳大学現代社会学部現代社会学科都市環境デザインコース卒業
2008年 愛知淑徳大学大学院現代社会学研究科博士前期課程修了
2008年 D.I.G Architects勤務
2014年 302アーキ設立
2018年 ボンドアーキテクツとして活動

受賞歴
2014年 わが家のリフォームコンクール 特別賞
2018年 愛知建築士会名古屋北支部第9回建築コンクール「つくろう建築」古谷賞
2018年 わが家のリフォームコンクール すまいる愛知賞 UR都市機構中部支社長賞


寺嶋利治(てらしま としはる)

1987年 愛知県大府市生まれ
2009年 名古屋市立大学芸術工学部都市環境デザイン学科(久野紀光研究室) 卒業
2011年 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科(久野紀光研究室) 修了
2011年 アトリエ・天工人
2016年 名古屋位市立大学大学院芸術工学研究科 助教
2018年 ボンドアーキテクツとして活動

作品
亀崎3軒長屋 レトロフィット&コンバージョン(日本建築学会作品選集)
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