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団地の可能性を感じるリノベーション事業だと感じました

CREATOR’S VOICE

野副晋平建築計画事務所 – nmstudio

事業提案競技に応募されたきっかけは何でしょうか。

野副晋平建築計画事務所
この「平成30年度公社千里山田西住戸改善事業」のコンペは、建築系の情報発信サイトで知りました。私は独立したばかりで、nmstudioの二人もドイツから日本に帰ってきて事務所を開くことが決まっていて、コンペに応募できる条件をクリアしていたのでチャレンジしました。日本とドイツなので時差をみながらSkypeで打ち合わせを重ねました。

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学生時代に研究室で建築物のストック活用の事例研究に携わっていたこともあり、もともとリノベーションには興味を持っていました。
私たち2人はドイツ・ベルリンの設計事務所に勤めていたのですが、幸運にも現地のリノベーション、コンバージョン(建築の用途転用)の案件に携わることができました。今回、帰国にあたりその経験を活かせないかと思ったのがきっかけです。

団地に対してどのようなイメージを持っていましたか。

野副晋平建築計画事務所
私は大学時代にベトナムのハノイで1970年代に建てられた公営の団地の調査や研究をしていました。そこで見た住まい手の人達の自由な生活スタイルが生み出す活気を見ておもしろいと思っていました。
また私とnmstudioの森は、多摩ニュータウンの近くにある大学、大学院に通っていたため、団地には日常的で身近なイメージがあります。

nmstudio
日本の団地は、戦後の住宅不足を解消するために、いかにして効率的かつ機能的に住宅を提供するか非常に考えられています。中高層化することで建築面積を減らし、緑地など広いフリースペースを確保できている点も素晴らしいと思います。住処を出てすぐに緑が広がるというのは都市部では貴重ではないでしょうか。その反面、同じ住戸が大規模に並ぶことでできる「均質性」は、現代に要求される「多様性」との摩擦を生んでいます。そのことが、団地に対するネガティブなイメージの原因の一つなのではないでしょうか。
私たちの住んでいたベルリンでは、東ドイツ時代にプラッテンバウという集合住宅が大量に供給されました。日本の団地にとても近い印象で、建設当時は近代的なものとして憧れの対象であったという点もよく似ています。しかし、誰もが同じように暮らすことを目指した建築ですので、外から見ていると窮屈な感じがあり、ドイツ統一後は、東ドイツ時代を思わせるからか市民の人からの評判もあまり良くはなかったと聞いています。
それにも関わらず今は空き部屋がほとんどないのです。もともと機能的に計画されているので、DIYやリノベーションをしやすく、住まい手が自分の好みに合わせて住んでいます。なので、一見同じように見えて中身には多様性がある。その様子がとても面白いと思っていました。
日本の団地も、同じように大きな可能性を秘めていると感じています。

住まい方のイメージ、設計段階で気をつけたポイントなど、設計のコンセプトを教えてください。

過去に行われた一連の団地リノベーション事業は、様々なプランを用意することで多くの選択肢を提供し、住まい手の多様性を受け止めていると感じました。そこで私たちはもう一歩踏み込んで、住んでからも住まい手自身の個性が出やすい住戸にしたいと考えました。
具体的には、大きなワンルーム空間の中に「シマ」と呼ばれる小上りと、「モノカベ」と呼ばれる収納壁を配置しました。ワンルームのおおらかな空間は家族構成や、住まい手の趣味、季節などに応じて自由にカスタマイズすることができる空間です。
有孔ボードで構成された、「モノカベ」には住まい手が好きなように服や小物、棚などを配置することができます。更に、シマとモノカベを基準としてカーテンレールやライティングレールを設置し、好きなカーテンや照明を取り付け、間取りも自由に変えられるようにしています。こうすることで、自ずと住まい手の好みが空間に反映されていき、ここにしかない住戸ができるようになると考えました。

リノベ55「プラン1」間取り
リノベ55「プラン1」イメージパース

リノベ55「プラン1」間取り、イメージパース

リノベ55「プラン2」間取り
リノベ55「プラン2」イメージパース

リノベ55「プラン2」間取り、イメージパース

リノベ55「プラン3」間取り
リノベ55「プラン3」イメージパース

リノベ55「プラン3」間取り、イメージパース

リノベ55「プラン4」間取り
リノベ55「プラン4」イメージパース

リノベ55「プラン4」間取り、イメージパース

公社のリノベーションの可能性についてどう思われますか。

野副晋平建築計画事務所
団地の住戸内外に様々な可能性があると思っています。住戸の内部では複数住戸を使うものは可能性を感じています。家族のカタチや住まい方が多様化しているこれからの社会では複数の住戸を使ったりしながら、フレキシブルに対応できるのではないかと思います。また、駐車場や道や公園などの広々とした外部空間にも可能性があると思っています。
多くの人が集まって住むということはそれだけでも大きな可能性を感じます。

nmstudio
隣棟間隔が離れていて、十分な採光が確保でき、外の風景や緑が楽しめるのは団地ならではの特徴です。プランがシンプルで機能的なのも魅力的です。団地はリノベーションによって最高の環境になり得ます。だからこそ、公社の行っている実験的なリノベーションへの取り組みは、大阪だけではなく日本全体の団地にとって、大きな可能性を示しているのではと思います。特に様々な建築家と組むことで、住まい手に多くの選択肢を与えていくことは、これからの時代にとって重要なことだと感じています。
また、今回は住戸内のリノベーションでしたが、団地全体のリノベーションも面白いのではと考えています。団地内の共有スペースを増やし、大きな意味でのシェアハウジングにしても面白いかもしれません。

設計の狙いなどその他、こだわったことはありますか。

野副晋平建築計画事務所
引っ越しを考えるときに、現在持っている家具などが配置できなかったりすることが多く、もっとプレーンな間取りがあればいいのにと感じていたこともあり、持っている家具が自由にレイアウトできて、自分たちでカスタマイズもできるプランがいいなと思いました。
また、元の空間を最大限に活かしたいと考えていました。住戸は隣棟間隔が離れていることと、南北に開口部があることが特徴で、どこにいても外部環境を感じられる明るい住戸になると良いのではないかということをコンペの初期段階から考えていました。

nmstudio
コンセプトでも話しましたが、どのように多様性に対応するべきかはやはりこだわりました。
通常の賃貸住宅では住まい手がDIYをしたくても、制限が多い上に退去するときには原状回復をする必要があります。せっかく頑張っても最終的には何も残らないから、多少の不満はあってもそのまま住むという人が多いのではないでしょうか。
この提案では様々な工夫によって、賃貸でも気軽に部屋をカスタマイズできるように設計してあります。住まい手の方には、僕らの想像していないような使い方を発見していただけるかもしれません。どのように住んでいただけるのか、とても楽しみです。

プロフィール

野副晋平建築計画事務所・nmstudio
野副晋平建築計画事務所

野副晋平(一級建築士)
1981年 東京都出身
2009年 首都大学東京都市環境科学研究科建築学専攻修了
2010-17 年 千葉学建築計画事務所勤務
2018年 野副晋平建築計画事務所設立

受賞歴
2018年 大井町駅前パブリックスペース設計コンペティション 入選(nmstudio、讃岐亮と協働)


nmstudio

蜷川結(一級建築士)
1985年 京都府京都市出身
2009年 京都工芸繊維大学工芸学部造形工学科卒業
2010-18 年 KUEHN MALVEZZI, Berlin勤務
2018年~ 日本に拠点を移し、nmstudioを本格始動

森創太(一級建築士)
1984年 埼玉県川越市出身
2009年 首都大学東京都市環境科学研究科建築学専攻修了
2010-18 huber staudt architekten, Berlin勤務
2018年~ 日本に拠点を移し、nmstudioを本格始動

受賞歴
2011年 第2回ROOMS空間デザインプレミオ 最優秀賞
2014年 第1回サンワカンパニーデザインコンペ 最優秀賞
2014年 札幌市資料館リノベーションアイディアコンペ 最優秀賞
2015年 富士吉田地域デザインコンペティション 優秀賞
2015年 南三陸町 復興の橋デザインコンペ 優秀賞(同率一位)
2018年 ウッドフレンズ 第3回住宅設計アイデアコンペ 最優秀賞
2018年 タイニーハウス小菅デザインコンテスト 優秀賞
2018年 大井町駅前パブリックスペース設計コンペ 入選(野副晋平、讃岐亮と協働)